カタリココ文庫◆大竹昭子短文集『五感巡礼』
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カタリココ文庫◆大竹昭子短文集『五感巡礼』

¥990 税込

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散文シリーズ ③ 大竹昭子『五感巡礼』 大竹昭子さんは旅の人であり観察の人だ。 カタリココ文庫散文シリーズ3冊目となる『五感巡礼』は、大竹さんならではの好奇心はそのままに、しかしこれまでとは趣が違い、ぐっと自らの内側に入り込み、耳をそばだて、目を凝らし、ときにユニークな考察を交えながら「自己」を探索することと、「文章を書く(編む)」行為が分かち難く絡み合い、不思議な感覚をもたらしてくれる一冊だ。 放浪の効用、聞こえてくるあの音は?、シマの境界、ことばの飛び地、「わたし」のなかのたくさんの「他人」、5つの章はそれぞれパズルのように小さなピース(文章)により成り立っている。 例えば、「放浪の効用」では彷徨いこんだ町の豆腐屋さんで道を訊ねていたはずの大竹さんが、次の瞬間、アメリカで低所得者層が利用するというグレイハウンド・バスに揺られ、運転手が「高速の降り方を教えてください!」と叫ぶ状況に直面している、といった具合に。 思いがけない角度から差し出されるピースに面食らい、慌てて自分のバスの行き先を、頁の角の見出しを確かめてしまう。 そんなふうに小さなピースは見出しに近づいたり遠ざかったりしながら、やがて四角くくない5つのパズルが出来上がっていく。 「からだを包んでいる一枚の皮がつねに呼吸し、新陳代謝を促しているのと同じで、シマの境界も皮膚呼吸ができるくらいに開かれているのがいい。」(シマの境界より) 大竹さんの表現は、カメラを構えファインダーを覗き、対象に焦点をピタッと合わせたようなシャープな輪郭をもち、パリッとノリの効いたシャツのようだといつも思う。読むたびにおろし立てのシャツにバリバリと袖を通していく快感がある。 本書ではそんな大竹さんの表現の生まれる現場を覗き見するような密やかなたのしみを味わえるのもいい。 あとがきに「読者の皆さんの感覚や思考までもが拓かれるということが起きたならば、無常の歓びである。」とあるように、この巡礼パズルにはおそらく完成形はなく、読者が想起したピースをはめることも、その時々で差し替えたりもできる柔らかさがあるのではないだろうか。 とすればこれは無限に遊べるパズルを手に入れたとも言えるし、読むたびに違うピースを発見するかもしれない予感にも満ちている。 コロナ禍の一年、ついに季節を一巡し、日常のもろさを体験し、身辺の見直しを余儀なくされたり、自分は何を求めるのか、どうありたいか、見つめる機会が増えてきているのではないだろうか。 煮詰まる前にちょっと一息、『五感巡礼』を開いてみてはいかがだろう。 -- 読書人WEBで「作家・大竹昭子さんに聞くリトルプレス「カタリココ文庫」」が公開されています。ぜひご一読を。 https://dokushojin.com/reading.html?id=7733 表紙は『室内室外』に続き、工藤夏海さんのイラストが起用されています。 工藤夏海さんの作品集『世の中のグラデーション』も販売中です。 https://koshohoro.stores.jp/items/5f5ca62c93f619347fb9d1a6 大竹昭子のカタリココ http://katarikoko.blog40.fc2.com/ ----------------------------------- カタリココ文庫 散文シリーズ 3号 大竹昭子短文集『五感巡礼』 発行 2021年1月22日/カタリココ文庫 大竹昭子 編集協力 大林えり子(ポポタム) 装幀  横山雄(BOOTLEG) 表紙・挿画 工藤夏海 文庫サイズ https://katarikoko.stores.jp/items/6006dc227fafdb199c507cbd ----------------------------------- 〔カタリココ文庫刊行リスト〕 ▪︎ 散文シリーズ  1号 室内室外 しつないしつがい 大竹昭子短文集  2号 スナップショットは日記か?      森山大道の写真と日本の日記文学の伝統 大竹昭子  3号 五感巡礼 大竹昭子短文集 ▪︎ 対談シリーズ  0号 福田尚代 美術と回文のひみつ     聞き手 大竹昭子(小出由紀子事務所発行)  1号 高野文子 「私」のバラけ方      聞き手 大竹昭子  2号 鴻池朋子 絵のうら側に言葉の糸をとおす     聞き手 大竹昭子+堀江敏幸 ----------------------------------- 大竹昭子さんのトークと朗読のイベント〈カタリココ〉に、2009年から当店も毎年会場として参加しています。